愛媛県立とべ動物園

飼育日記

コウモリてんこモリ

2017年6月08日

【その19】千葉県での赤ちゃん保護

またまた久しぶりの更新になってしまいました。
去年から今年にかけて、愛媛県内で50年ぶりにヒナコウモリの成獣が保護されたり、冬眠明けに保護されたアブラコウモリが早くも赤ちゃんを生んだり、といろいろなことがありました。
でも、まずは昨年ご相談を受けた千葉県の例をご紹介しましょう。

2016年7月にコウモリの赤ちゃんを保護したというご相談をお電話でいただきました。愛媛県内なら連れて来ていただくところですが、何と千葉県在住の方からのご相談でした。そこで、そのあとはメールでアドバイスを続けていましたが、無事に1頭が巣立ちしたとの嬉しいご報告がありました。Sさんとおっしゃる方ですが、巣立ちをした後に今回の人工哺育の経過をまとめて送ってくださいました。6月を迎えて、これからコウモリの出産時期に突入します。迷子になったチビチビコウモリたちを目にする機会も増え、動物園にご相談が寄せられるようになりますが、Sさんのこの文章がとても参考になるのではないかと思います。ほんの小指ほどの小さな生き物に、たくさんの愛情とお心遣いを注いでくださったことがよくわかる温かい日記なので原文のままご紹介します。

あぶらコウモリの保護記録

2016年7月9日
自宅の2階のトイレの換気扇の中から生き物の音がすると、家族の者が青くなってスプレーをまくと中の生き物が何匹か飛んで行きました。翌日、換気扇の外壁に一匹黒い物が張り付いていましたが、夕方には下の除草シートの上に落ちていました。コウモリでした。恐る恐る、チリトリの上にのせ、近くの木の下(日陰)に置き水を近くに少しこぼしておくと、気付いて顔を向けて鳴いたように記憶しています。翌朝見るとその子は亡くなっていました。死なせてしまって後悔が残りました。

私たちの家は千葉市の住宅地で近くに勝田川という小さな川と畑、緑、貯水池があります。

翌々日の7月11日、同じ換気扇の中から12匹の飛べないでいる子コウモリを発見。
内、毛が生えていない赤ちゃんが2匹。他も毛が生えていても飛べないコウモリたちでした。シューズ用のプラボックスをケージ代わりに新聞紙のちぎったものを入れて保護しました。綿棒で水をやり、特に赤ちゃん2匹にあげていました。幾つかの関連団体に連絡をしました。県の自然保護課にも連絡しましたが、保護できない、保護した者の責任との話でした。

次の日の夜、大人のコウモリ数匹が近くを旋回しており、子コウモリたちをケージに入れ2階のベランダの手すりに固定しておくと、子供のコウモリたちが一生懸命音を立ててその音で大人コウモリが数羽辺りを旋回しだしました。しかし大人コウモリは手すりに止まれない様子だったのでケージをベランダの床に横倒しにして子供たちを出すと、一匹の大人コウモリがベランダの床の上に降りたって音を出して必死に子供たちを探し出しました。数センチまで近づいていても子供の場所をうまく確認できない様子でしたが、ここまで来れば見つけるのは時間の問題、これで連れて行ってくれるだろうと、ホッとしてそのままケージを置いてしまいました。

翌朝、見てみると明け方スコールが降ったらしく、子コウモリたちを入れたケージ内のタオルが濡れており、12匹いたコウモリのうち3匹はベランダで亡くなっており赤ちゃん一匹が含まれておりました。ケージにいる3匹は残って鳴いていました。また3匹がサンダルの裏に隠れていたのが後に見つかりましたが亡くなってしまいました。唯、消息不明の子コウモリが3匹おり、その中には残り一匹の赤ちゃんコウモリが含まれておりました。親コウモリは子コウモリ一匹ならお腹の脇に抱えて飛べるとの話を聞きました。親コウモリがこの子たちを連れて行ってくれたのではないかと思いました。

残った3匹を再びケージに入れて保護しました。近くのホームセンターで猫ミルクの冷蔵タイプを買ってきて、温くして綿棒で与えますが、余り飲んでくれません。水だと飲んでくれます。翌日、旅行でどうしても3日間家を空けなくてはなりませんでした。家族に水だけは何とか入れてもらうように頼みました。

戻ってくると1匹亡くなっていました。すぐさま、生餌のミルワームを買ってきてピンセットで与えると2匹とも喜んで食べてくれます。が、このうちの1匹も翌日死亡しておりました。比較的元気だった大きめの子コウモリでした。子コウモリたちは仲間が死ぬとその体の上にずっと乗っかっています。気持ちを引き締めて残りの一匹を何とか生き残らせようと考えました。

一度脱走して綿のトートバックから出てきたところです。茶目っ気のある表情です。
一度脱走して綿のトートバックから出てきたところです。
茶目っ気のある表情です。

残った一匹のコウモリには毛は生えていますが、他の個体と比べて小柄で「チィちゃん」と呼びました。臆病で慎重な性格に見えました。毛は生えていますが大人と赤ちゃんの中間ぐらいに見え、(とべ動物園さんのブログでは亜成獣と呼んでおられました)
家族には人間の小中学生位だよと言っていました。
プラスチックのケージにバスタオルを小さく折り畳んだものを敷いて、後に肌着の布を毛布代わりに置き、水を飲みやすいように小皿に布、ガーゼをこよりにして水を浸したものをおいておきました。
自分の部屋にケージを置いて出来るだけ目が行き届くようにしました。タオル類、水は毎日、取り換えていました。


食事はミルワームを切りピンセットでクリーム状の中身を出し口元に持っていくとすぐ気付いてかぶりつく様に食べてくれます。私の声がすると気が付いて音をたててせがむ様になりました。ワームの中身を自分で頑張って吸ったりして食べる様になりましたが、殻まで少し食べてしまう事があり、暫く口をもぐもぐさせながらしゃっくりみたいに音を立てています。食欲も落ちることもあり、とべ動物園さんにも相談してやはり殻が詰まったようだとの事で、殻を食べないように中身を出したものだけ食べるように工夫しました。

また、3、4日経つと急に気温が20度~25度に下がってしまい、肌寒い日々が続きました。
すると食欲が落ちてしまい、ネットでホカロンの事を知り、買ってきてタオルを巻いてケージに敷いてみると、暖かいと分かるとすぐその上に寝て、羽を広げてリラックスする様子です。あーぁと欠伸をしたり、トイレもホカロンの上。消化が良くなるように見えます。また、寒いと食欲減退したので猫の粉ミルク(ラクトフェリン入り)を買い与えてみましたが、水のような便がでたので中止しました。

1度、脱走した際に部屋の中にあった綿の大きなバッグの中におり、中に入れていた肌着(スリーブ)の間に嬉しそうな様子でいました。さぞや居心地が良いのかと同じ肌着の切れ端を包まれる様においてやりますと、即座にその中に入っていったので以来、いつも入れておきました。(また綿のトートバックの中も部屋の中でこの子コウモリにとって居心地がいい場所に思えました。)

2度目の脱走は止まり木代わりに入れた岩を伝ってでした。
真夜中に強い地震が起こり、直後パタパタパタという音がベッドの下で聞こえてきました。
呼んでも出てこず、暗闇の中さらにカリカリ、パタパタパタと音がしました。暫くして私のベッドの枕元近くの壁を這い上がってくる音がして、明かりをつけるとチィちゃんが必死な様子で壁を登ってきました。軍手でそぉっと手中に保護すると、中で体が震えて心臓がバクバク言っているのが伝わってきました。頭や背中を優しくさするとバクバクが落ち着いてきてケージのタオルの中で眠ってくれました。
面白い事に翌日は食事量が増え、ワーム12匹をむしゃむしゃ食べました。夜中に逃走したのが適度な運動になったようです。

再び暑い日が続き、外出の際は前もって水分を与え、扇風機を付けて外出するなど、対応しましたが、うっかり熱い部屋に置いてしまうと、タオルの外に顔を埋めてハァハァ言わせながら、暑がっている様子でした。不在の時は玄関の暗いところにケージを移動すると調子が良かったです。エアコンも人感で少し涼しい程度であれば元気にしているようでした。
保冷剤をタオルで巻いて置いておくのもよいと思います。

暫くすると自分の部屋にいる時に体中がたまらなくかゆくなりました。
コウモリのせいかと思い、ティッシュにぬるま湯を付けたもので体にこびりついた汚れを取ろうとしましたが、驚いてしがみついてきた際に中指に少し引っ掻き傷が出来てしまいました。やはり素手はなるべく避けてゴム手袋、軍手がよく、特に軍手は気に入って乗ってくれます。結局、かゆみの原因は家ダニでした。無害だという事ですが、これはおが屑の容器に入っているミルワームから発生するものと知り驚きました。ミルワームは別所に保管し時々冷蔵庫に入れてやる方がいいと思います。

8月に入り、丸1か月になろうとしています。暑さもたけなわになり、野生に戻すにはちょうどいい時期に差し掛かりましたが、どうも食事を食べたり食べなかったり、ジッとしてばかりいる事が多いように思えます。そこで夜中に自宅の周辺を散歩に連れて行きました。もしかすると、親が気付いてくれるか、仲間に会えるかもしれません。チィちゃんは音をだしていましたが、夜の公園はセミの大合唱、軍手の中に隠れてしまったチィちゃんですが帰り道、チィちゃんを乗せた軍手を飛行機みたいに左右に振ってやると興味を示したようでしきりに体を前に乗り出していました。

あぶらコウモリはとても小さい生き物ですが、観察しているとまるで犬猫の子供のような反応、情愛、知性を見せてくれました。頭や背中をさするとこちらを向いて嬉しそうに声を出します。そういった接触、呼びかけを毎日することが集団生活をしていたコウモリの元気につながるような気がしました。

それでも一匹で野生に戻すのは無理があるように思いました。よくチィちゃんを軍手の上に乗せ、夜2階の窓から外をのぞきますがその際、クリック音?(カチカチというような音)をよく発していましたが、以前の様に親が来る様子がありません。コウモリの会にたずねるともう親は来ないだろうという話でした。それならば徐々に戻すことが順当だろうとコウモリの箱(bat box)をベランダに作ろうと考え準備しだしました。同時に新しいケージを作りました。金魚の飼育用の30cm高のプラボックスの壁面に網戸用のネットを両面テープで張り、下にはタオルを敷いて、そのネットに留まらせてみると、思った以上に気に入ったらしく、そこでくつろいだ様子で羽を広げたり、毛づくろいをして体についた虫などを噛んで食べたり、床でジッとしていた時とは態度が変わってしまって驚きました。ぶら下がることで体温調節や毛づくろいが楽に出来たり、代謝がスムーズになったり、またぶら下がることで翼を思い切り広げられ、てっぺんまで登りそこから飛ぶ練習にも繋がっていけるような気がしました。健康を保つためにも野生の時と出来るだけ同じ環境にする事も大切なのだなと思いました。

同日の夜、機は突然やってきました。無風の暑い夜です。ネットを張ったケージを2階の窓辺に置いておくとチィちゃんは窓の網戸までよじ登って、そこでしきりに音を出していました。一緒に窓辺の外を見つめていると信じられない事に黒い影の個体が目の前をさっと通り抜けました。チィちゃんの反応も大きくなり、カチカチ音をしきりに出し、“チィッ”と一声鳴いたり、思い切り体をブルブル震わせたりしていました。黒い影は1mの至近距離を何度も飛来しますが、網戸にとまって連れて行ってくれる気配はありません。
チィちゃんも長丁場になってきており、途中欠伸をしたり、網戸の下に落ちた為のタオルを敷き詰めると、それがわかったのか、網戸の上からパタパタ羽ばたき、ポトンとタオルの上に落ち、まるで飛ぶ練習をしているようでした。暫くして黒い影が目の前をまた何度か横切りました。チィちゃんはまた網戸を登ります。思い切ってチィちゃんを網戸の外側に留まらせました。数分ほどそこでカチカチ音を出していましたが、大人コウモリは網戸に留まってくれる様子はなく、何度も近くを飛びます。
その瞬間、意を決するようにチィちゃんが“パタパタパタ”と思い切り羽ばたいて飛び立ちました。でもその後がよく見えません。すぐ下に向かいライトであたりを良く照らして落ちていないか確認しましたが落ちた姿は見えません。翌朝、建物の引っ掛かりそうな場所、隣の庭などを見ましたが見つかりません。本当に1か月近く奮闘して一瞬の出来事でした。

ちゃんと飛べただろうか、なぜもっと飛ぶ練習をしなかったのか、色々な後悔や不安がよぎりました。が、親らしきコウモリが一匹、子コウモリの声を聴いて何度も近くを旋回していた事、この子コウモリが何より野生に戻りたがっていた事、またこの1か月の間、成長して力をつけてくれた事、そしてチィちゃんの茶目っ気あり賢く力強い野生を見てきて、死ぬはずがないという確証めいた気持ちがわいてきました。ですから今回はハッピ―エンドに終わったにちがいないと信じています。

コウモリの会からはもう親は来ないと言われておりましたが、一度迎えに来た夜から、また来る可能性はあると信じて、夜チィちゃんをよくベランダや窓辺に連れて行きました。今回現れたのは一匹でした。子コウモリは非常に興奮しておりました。
それにしてもひと月です。親コウモリが連れに戻ったとすればとても愛情深く、きちんとした子育てをしている様子で賢い動物なんだと思います。
本当に半分諦めていたので奇跡のように思えましたのでご報告します。


以上がSさんのまとめて下さった日記です。
Sさん、本当にお疲れ様でした。コウモリの子どもはしっかり体力をつけていれば、ある日突然飛翔できるようです。過去にとべ動物園でも、人工哺育中の子どもがある日突然何の前触れもなく、それはそれは見事に飛翔してそのまま放獣…、という結末を迎えたことがあります。きっとチィちゃんもどこかにねぐらを見つけて、元気に暮らしているはずです。
また、チィちゃんの巣立ちの際に飛んできたコウモリが親かどうかは神のみぞ知るところですが、その個体が出していた超音波にチィちゃんが反応したのは確かなことだと思われます。そして、その刺激に誘われて自ら飛んだと考えてまず間違いないでしょう。
一昨年頃から、県外の方からコウモリについてのご相談を受けることが多くなってきました。Sさんの日記は温度や飼育容器、運動など、細かい部分でとても参考になると思います。掲載が遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんでした。何とか今年の出産シーズンには間に合いそうでほっとしているコウモリ母Tです。

(T)

コウモリ豆知識

こうもり傘と言えば、お父さんが使う黒い傘。ほんとはこうもり傘ではなく、ただ「こうもり」と呼ぶという話をどこかで聞いたような気がしますが、どちらなんでしょうか?「こうもり」と呼ぶ方がなんとなく粋だなあ、などと考えたりします。「雨が降りそうだからこうもりを持ってきたよ」なんて、文明開化の頃のダンディな紳士を思い浮かべませんか?「雨が降りそうだからこうもり傘を持ってきたよ」ではあまりダンディではないような気がします←まったくの主観的見解です(笑)
話がそれました…。なぜ「こうもり傘」というか、それはこの写真を見れば一目瞭然。
まさに黒い傘ですよね。傘の骨に見えるものは前肢の指です。

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