愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

あんたが大将

とべ動物園にはオス2頭、メス4頭の計6頭のチンパンジーたちが暮らしています。うち2頭はまだ仔どもです。この家族を束ねているのは、お父さんのロイです。ロイはこの家族唯一の大人のオスで、体もひときわ大きくいつも偉そうで家族からは一目も二目も置かれています。ロイの機嫌のいい日は平和な一日で終わり、悪い日は誰かしら被害を受けます。いわゆる、お山の大将です。
そんなロイですが、無邪気で繊細な一面を持っています。とても遊び好きで私たちに催促することもありますが、実はあかんたれなんです。落ち込んだりストレスを感じると手足の指先を傷になるほど、かきむしります。時にはメスに対してうっぷん晴らしすることも。
そこで、ケンカやストレスの予防対策として「環境エンリッチメント」に取り組んでいます。フィーダーを使って遊びの要素をとり入れた給餌、ナッツ割り、学習タッチパネルと退屈させないようにしていますが、ことらの苦労もむなしく時間的には一瞬で終わってしまいます。
野生下では活動時間の50~60%を採食行動に使っているという報告があります。環境エンリッチメントは採食、社会、認知、感覚、空間などの多様な視点から取り組まなければなりません。もうすぐ2歳になる仔どもたちの成長もロイにとって良い刺激になるかもしれません。近い将来ライバル出現!私たちの悩みのタネは増えますが、ロイにとっていい緊張感が生れると期待しています。チンパンジーは本来、複雄複雌の群れで生活しているのですから。
(類人猿担当 中西 一則)