愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

母と娘とばあちゃんと

モンキータウンには5頭のブラッザモンキーがいます。この5頭は現在二つのグループで飼育管理しているのですが、今回は、「パンドン」、「パゴス」、「ニアン」の三頭が生活しているグループのお話です。この三頭は血縁関係にあり、祖母(パンドン)・母(パゴス)・孫(ニアン)といった関係にあります。

昨年の夏、父親であった「タイラ」がこの世を去って以降、メス三頭の生活となりました。オスがいなくなったということでパゴス母さんが力を発揮しており、食事の時は他二頭にプレッシャーをかけながら優先的に食べます。そのため、パンドン婆ちゃんとニアンはなかなか餌に手をかけることができず、特にパンドン婆ちゃんは隅の方でパゴス母さんの食事が終わるのを待っている様子がよく観察されます。これではパンドン婆ちゃんが衰弱してしまうため、パンドン婆ちゃんとパゴス母さん・ニアンを寝室とパドックに分離し餌をあげることもしています。

左:バンドンばあちゃん 右:ニアン 普段はなかよし

エノキの葉を食べるパゴスと
奥でそれを見つめるパンドン婆ちゃん

しかし最近、ニアンの知恵というものが行動から感じられるようになりました。パンドン婆ちゃんが一頭だけでゆっくり食事を食べていることを知ったニアンは、パンドン婆ちゃんと一緒にいれば自分が優位に食事出来ると思い、分離をする時パンドン婆ちゃんの側にいるのです。パンドン婆ちゃんと・ニアンをセットにしパゴス母さんと分離をした場合、やはりパンドン婆ちゃんは隅でうずくまりニアンが餌を独占してしまいます。日頃からニアンはパゴス母さんには敵わないものの、パンドン婆ちゃんに対しては自信を持っており、時折パンドン婆ちゃんの背中に乗ったり噛みついたりといった行動も観察されています。

たった三頭の親子の群れですが、野生動物が持つ「餌」に対する執着心と「強いものが生き残る」という自然界の厳しさを感じ取ることができます。また、群れのリーダーが変わることによって群れ全体が変わるといった、リーダーの重要性も考えさせられながら飼育している今日この頃です。

ニレの葉を食べるニアン

自分の手元にたくさんの餌を集めて食べるパゴス