愛媛県立とべ動物園

沿革・歴史

とべ動物園の沿革・歴史

とべ動物園の前身は、昭和28年に設立された道後動物園です。
より多くの動物がより自然生態に適した環境の中で生活できるようにと、昭和63年4月、静かな丘陵地の県総合運動公園内に移転し、とべ動物園が誕生しました。
園内には、約170種823点(平成22年3月31日現在)の動物が、地理学、分類学、行動学にもとづきバランス良く集められています。パノラマ展示による立体感ある風景、ストリート(ゾーン)誘導方式による動物の国世界一周など、冒険心をかきたてます。
また、各ゾーンごとに観察のポイントを記した案内板や学習のための解説パネルなどがあり、わかりやすく楽しく観る工夫がなされています。
ブルーのユニホームの動物キーパー(飼育係)は、心の通った案内、指導、動物についての相談などをおこなっていますので、本などでは知ることのできない生きた知識を得ることができるでしょう。

建設・移転

道後動物園

道後動物園
愛媛県立道後動物園は昭和28年の創立以来、県内唯一の動物園として多くの方に親しまれてきました。
しかし温泉街や住宅地に隣接して建てられていたため、月日が経つに連れて様々な問題が目立ち始めました。騒音や悪臭に対する苦情、敷地の都合上施設の整備・拡張が難しいなど・・・。そこで、道後よりももっと広い砥部町に動物園を移転させる計画が立てられて、実行されました。
動物園が移転するということは、当然動物たちも一緒に引っ越しをします。
小さい動物たちだけでなく、ゾウのような大きな動物ももちろん一緒です。引っ越しの時に動物たちをそのまま外に出すことは危険なので、何が何でも移動用の檻に入ってもらわなければなりません。
道後動物園
しかし、道後動物園の閉園日(昭和62年10月21日)から引っ越し(同28日~30日)の終了までに与えられた時間はたったの10日。
もちろんその年の4月から綿密な打ち合わせを繰り返し、捕獲道具の準備を着々と進めてきました。でも、打ち合わせどおりに進むとは限らないものです。

そのため、閉園してからは動物園のあちこちで動物たちを捕まえるために走り回る飼育係の姿が見られました。たとえば・・・。

サルの捕獲作戦
サルの捕獲作戦
10m以上もある斜面に住んでいたサルたちの捕獲には、麻酔銃と網が使われました。
麻酔を使ったのは、広いスペースで自由にしているすばしっこいサルを網だけで捕まえるのは不可能だからです。でも麻酔が効きすぎて眠ったまま10mもの高さから落ちてしまっては、いくら木登り上手のサルでも命にかかわります。
麻酔が半分効いてきたところで捕まえるために、高さに対する恐怖と戦いながら飼育係も檻をよじ登り、斜面の上で網を片手に待機して、眠りかけたサルたちを捕獲しました。眠りかけていてもサルはサル、動きは人間よりも速いです。飼育係も落ちないように用心しながら、‘空中戦'に臨みました。
園長の説得?
園長の説得?
ライオンやトラ、クマは餌での釣り込みを行いました。
この日のために何日か前から絶食させていたにもかかわらず、なかなか思うように檻に入ってくれません。食欲よりも檻に対する警戒心・恐怖心が勝ったのか??餌がダメなら別の手で!というわけで園長・担当者による粘り強い説得工作(!?)に切り替えました。
その結果、説得が効いたのか諦めたのか根負けしたのかは不明ですが、どうにか予定日までにはみんなが檻の中に入ってくれました。
カンガルーの捕獲
カンガルーの捕獲
事前に捕獲して閉じ込めると暴れて事故を起こす可能性が高かったアカカンガルーは、引っ越しの当日に大急ぎで捕獲です。
報道のカメラも見守る中、暴れるカンガルーに素手で立ち向かい捕獲!もちろん1対1では勝ち目は無いので1対多数ですが・・・。この他にお堀に放し飼いにしていたアヒルやカルガモの捕獲に手間取り、やけくそになった職員が寒さと雨にも負けずに水に入って捕まえたり、シマウマの腰にギロチン戸が落ちたりといろいろなエピソードを残しながらも大きな事故もなく、無事に捕獲作業を期限内に終了することができました。

なかよし広場の造成

そのころ、とべでは動物園の建設が急ピッチで進められていました。
動物たちがやってくる前に、獣舎だけはなんとしてでも完成させなければなりません。写真はとべ動物園建設中のものです。今のどのあたりかわかりますか??

  • なかよし広場の造成
  • クマ舎前から水禽舎を見る

正解は、売店側からみたふれあい広場とクマ舎前からみた水禽舎です。ぜひ今の動物園とくらべてみてください。

大移動!

大移動
話をもとにもどして昭和62年10月28日、引っ越し当日を迎えました。
それまでの悪天候がうそのように晴れ上がり、絶好の引っ越し日和でした。午前10時に開催したセレモニーの後、いよいよ動物たちがとべ動物園へ向けて旅立ちます。道後からとべまでの距離は約12km。動物たちにとって大変な長旅です。
この日の引っ越し対象はほとんどの大型獣。運ぶ方も運ばれる方にも緊張が走ります。 午前10時30分、白バイに先導されてゾウのタロウとハナコを積んだトレーラーが動き出しました。先頭から最後尾まで700mもの長さにわたる、時速10kmのノロノロ行進の出発です!このノロノロ行進、一般道を走行したので周囲の車にとってさぞ迷惑であったかと思われますが、ほとんどのドライバーが暖かく見守ってくれ、クラクションを鳴らして動物たちを驚かせるような人はいませんでした。
動物たちの引っ越しの様子を通行中の方にも見てもらうため、車の荷台にはわざとシートを被せませんでした。

新しい獣舎に降ろされるゾウ

新しい獣舎に降ろされるゾウ
正午前、ようやくとべ動物園に到着!全車が無事に次々とゲートをくぐりました。
地元砥部町の歓迎式典の後、動物たちを獣舎に移しました。写真はゾウの搬入作業の様子です。ゾウは大きいので、ご覧のとおりクレーンを使って空から搬入しました。檻ごと宙に浮いたゾウはさぞ驚いたことでしょう。ゾウに限らずどの動物も引っ越しに神経を尖らせたままで、新居を警戒してなかなか寝室へ移動してくれません。こういうときは事故が起こりやすいので、捕獲のとき以上に事故を起こさないように気を遣いました。
続く29日にはサル類・は虫類、30日には鳥類が引っ越してきました。28日に比べるとトラックも少なく、静かな引っ越しでした。

こうして3日間にわたる大移動は無事に終了し、引っ越した動物たちには新しい獣舎に慣れるためのトレーニングが始められ、その他に開園にあわせて導入された新しい動物も続々とやってきました。園内の通路や広場の整備も進み、いよいよ63年春の開園を待つばかりとなったのでした。