動物の様子

オヒキコウモリがやって来た

①保護直後、痩せてます

 4月末にオヒキコウモリのメスが保護されてきました。オヒキコウモリは、大きくて丸い耳とネズミのような尻尾が特徴で、「オヒキ」という名前は引っ張って伸ばしたような長くて細い尻尾が由来だと言われます。体重は30g前後で、全長(鼻先から尾の先までの長さ)は12㎝ほど。体重わずか6g前後の小柄なアブラコウモリばかりを見慣れているので、最初にオヒキコウモリを見た時には、思わず「でかっ」と声が出ました。発見場所は松山市内であり、松山市内では記録上は3例目?くらいの希少種です。
 発見時はうずくまってほとんど動かず、体重も21gと痩せていて、衰弱が進んでいると思われました。保護してからは、とにかく水分補給と採食で体力をつけてもらおうと思い、アブラコウモリを保護した時と同じように口先にミルワームを近づけるのですが、2日間はまったく食べる気配を見せません。そこで3日目、どうしても今日は食べてもらおうと、オヒキコウモリを持ち上げて保定し、お腹側からよく観察してみると、なんということでしょう!!今まで口だと思っていた部位よりもだいぶ下側に口がありました。そしてそっとお腹の皮を引き下げてみると、それに引っ張られて口が開くではありませんか!!「アブラコウモリと違う・・・」
 開けた口にミルワームを入れるとしばらく黙ってかみしめていましたが、その内しゃくしゃくと音を立てておいしそうに食べてくれました。嬉しかった!!と同時に、見当違いの場所である鼻先にミルワームを近づけていたかと思うと「そりゃ食べんよね、ごめん」。
 一度味を覚えるとそれからはあっという間に自力採食ができるようになり、体重も一週間で28gまで増加しました。あとは太りすぎないようにエサを調節しつつ、一方で妊娠の可能性もあるので胎児の成長を妨げないような給餌量の調整が必要かと思われます。
 最後に余談ですが、当園のコウモリたちは保護された場所にちなんだ名前がついています。四国中央市で保護された「シコチュウ」、松山市梅本町で保護された「コウメちゃん」、動物園内で保護された「ズー(zoo)」などなど。今回のオヒキコウモリは松山市来住(きし)町で見つかったので「キシ子」さんと名付けました。苗字は「オヒ」。「オヒキシ子」さんは不定期ですが、こども動物センターで見ることができます。会えた時にはアブラコウモリとの大きさの違いをじっくり観察して下さいね。
(田村千明)

④オヒキの口は鼻よりかなり下にありました

⑤アブラコウモリと並べて展示

②こんなに大きさが違います

③アブラの口は鼻のすぐ下