風の庭で展示しているキュウシュウジカの雄には立派な角があります。シカの角は毎年生え変わります。春になるとそれまで生えていた角は落ち、新しい角が生えてきます。新しい角は最初は軟らかく、また袋状の皮で覆われていますが、やがて中が固くなり、外側の皮を木などにこすり付けて落としてしまうと、秋には白っぽい立派な角があらわれます。このような角が生えるころになると、シカは繁殖期を迎えます。雄はこの角を使って他の雄と戦い、強い雄が繁殖相手の雌を獲得するのです。
しかし、このオス同士のケンカは生半可なものではなく、時として命がけです。動物園ではケンカを避けるため、角を切ります。今年は11月14日に2頭の角を切りました。暴れてケガをすることを防ぐため、必要に応じて鹿に麻酔をかけ、線鋸というノコギリで切ります。角には神経も血管もありませんので、鹿は痛くもかゆくもないし、血も出ません。ただ、雄としての威厳はなくなってしまうかもしれませんけどね。シカと人の安全の為にはやむを得ない処置なんですよ。
(獣医師 河野良輝)