愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

2013年 夏の苦い思い出

今年の夏はこれまでにない酷暑でした。バイソン・ラマ舎では3頭の動物が熱中症になりました。

ラマの♂白(はく)(6歳)は短い体毛ですが、♀のイクヨ(13歳 )とイトヨ(12歳 )の体毛は長くて密なものです。ラマは南米の高い山で家畜化された動物で、暑さは苦手その上、ラクダの仲間でありながら換毛期がないため暑さのストレスに弱い動物です。
イクヨとイトヨは梅雨明け後の異常な気温上昇と同時に、動きが悪くなり食欲不振になりました。

まずは、パドック内で一番風の通る場所に寒冷紗を張り砂を敷きました。
エサをセットしても食べないため、カラス・ハト・スズメが順番にやって来て啄む状況。そんな中でも何とか食べてくれたのがサツマイモだったため増量しました。また、飲み水にはエレクトロプラス(経口用電解質製剤)を入れ、脱水症防止を行いました。

8月に入っても雨が降らず夜も気温が下がらない日が続いたため、パドック内にシャワーリング・扇風機を用意したところ、イクヨ・イトヨは競争するように扇風機前の場所取りをしました。今回の熱中症の一番の原因は換毛しない長い毛。来年からは早期の毛刈りも必要だと思います。

復活したモモ

バクの♀モモ(27歳)は5度の出産(すべてメスの仔)・子育てをすべて成功させた功労動物で、現在は悠々と生活しています。

今年の夏も良く食べて糞の形状も春に比べると改善されていたのですが、8月18日の夕方のエサを少し残していました。その翌日からは食欲低下となり、動きが緩慢でうんちも出なくなりました(熱中症の原因は熱帯夜でした)。高齢のバクのため、食べられない日が続くと危険と判断し、20日に採血を行うと白血球の数値が高く脱水症状も見られました。
特に投薬等はしなかったのですが、ストレスを溜めない環境作りに努めました。しばらく外のプールに入れない日が続くので、体を冷やすため室内にシャワーリングを設置しました。
食べたいけど食べれないモモに対して、食が進むように小さくカットしたり、興味を示したトマトを飼料係にお願いし用意してもらいました。又、普段の生活リズムを変えず、モモが特に好きなブラシッグをたくさん行い観察を続けました。
その後、9月に入りイクヨ・イトヨは少しづつ回復し、エサを食べてくれるようになりました。

9月に入っても残暑厳しいですが、虫の素鳴きや涼風を感じることが増え、確実に季節の移ろいを感じます。
この時期、毎年のことですが季節の変わり目ふと油断しがちです。気を引き締めて観察し、早期発見・早期対応に努めたいです。

イクヨとイトヨの休息

来園者向けのラマ看板