愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

マレーバクの採血

マレーバクは、ミャンマー南部からマレー半島、スマトラ島の熱帯雨林で単独生活をしている草食性の動物です。生息地は、森林伐採で減少しています。
伐採の主な原因は、製紙用の植林です。そんな生息地では、エサを探すのも、結婚相手を見つけるのも困難です。その結果、生息数は減少し、絶滅危惧種に指定されています。現在、日本の動物園では13園館で37頭を飼育していますが、近い将来、日本の動物園でもマレーバクを見ることができない日が来るかも知れません。とべ動物園では、現在オスのダン(12歳)とメスのロコ(8歳)を飼育しています。

単独生活をする動物なので普段は分離して飼育していますが、メスの発情を予測しながら同居をさせて繁殖を試みています。ロコは週に一度、健康管理と、性ホルモンを調べて性周期を見るために、立った状態で後肢の内側の血管から採血を行っています。ダンは月に一度、健康管理のために採血を行っています。ロコは食いしん坊なので、採血はエサを与えながら行います。一方、ダンはブラッシングが好きで、体を優しくブラッシングをしながら採血を行っています。あまりに気持ちよくなると座ってしまい、採血が出来なくなるので、加減が必要です。
繁殖のために同居させるのですが、ロコが逃げ回り繁殖には至っていません。寄り添ったり、お互いの匂いを嗅ぎあったり、仲が良い様子も見られるのですが、兆候は見られません。ちなみに同居のタイミングは、お互いの鳴き交わしや、スプレー尿の頻度、メスの陰部の腫脹や粘液の分泌などを目安にしています。これからも試行錯誤しながら飼育に励み、良い結果をご報告出来ればと思います。ダンとロコも毎日楽しく仲良く頑張っていますので、優しい目で見守ってあげてください。 
(三根生康幸)