愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

太郎の6回忌

6年前の1月19日早朝、彼はもう立ち上がることは出来ませんでした。
『もうええよーおきんで、かまんかまんそのままで、』朝7時前に太郎の頬をさすりながら声をかけました。
私自身、明日太郎は起きられないかもしれない!と前日から覚悟もできていました。インドゾウの太郎は1974年に道後動物園にやってきて、とべ動物園に移転した後に39歳の生涯を閉じました。亡くなる1年前から、足の不調、鼻の異常、肘や腰の浮腫、排尿の異変に、性格の変化など、様々な異変が起こり、獣医と懸命に治療をしましたがその甲斐なく、倒れ込んだ1週間後の2013年1月26日の夕方に息をひきとりました。今もいろいろなことを鮮明に思い出します。寒いお正月、なぜか寝室に戻らず三が日運動場で過ごしたことや、発情期に暴れて2トンもある扉を破壊したこと。最後は右の体を下にして亡くなりましたが、敷きつめた右目の下のワラはびしょ濡れになっていました。太郎の涙で。
ゾウ舎の天上は一部ガラスで夜空が見えるのですが、亡くなる最後の夜、太郎と二人で見たお月様はとてもきれいでした。
当時の獣医さんは1月になると、『あの季節がやって来ました、慰霊碑に眠る太郎に手を合わせに行きます』ってメールをくれて毎年訪れてくれます。
道後から砥部の地へ移転し、太郎が14歳、私18歳、運よく彼とめぐり逢い、25年間そばにいることができました、今でも太郎というゾウが大好きです。歴代の獣医師、ゾウスタッフ、わがままを受け入れてくれた園長、本当に感謝しています。飼育日誌という形で少し思い出日誌を書かせてもらいました。
大きな遊具のタイヤが僕の方に倒れないように、牙で守ってくれたあの瞬間の太郎の瞳は僕の宝物です。(松浦友貴)