愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

「インプラント」って何?

インプラント剤

先日、マントヒヒにインプラント剤を移植しました。
「インプラント剤って何?」そういう声が聞こえてきそうなので、ちょっと解説。インプラント剤(正式には徐放性製剤)の主な成分はホルモン剤。動物(雌)の皮膚と筋肉の間に移植することで、薬の作用を長期間(1〜2年くらい)持続させることの出来るものです。これを移植している間は発情が来なくなり妊娠しませんが、摘出するとまた発情が来て妊娠可能な状態に戻ります。
動物園の動物にはイヌやネコに行うような不可逆的な(元に戻せない)避妊手術はあまり行いません。動物園では種の保存も大事な使命の一つです。繁殖に必要な生殖器を手術で取ってしまうとその種(個体)は繁殖出来なくなってしまうため、特に雌雄混合多頭飼育している動物の一部では、その計画的な繁殖管理について今回のようなインプラント剤の移植が用いられているのです。
移植と聞くと難しそうですが、やり方は至って単純。まず麻酔をかけて(これが一番難しい!)、手が届かない背中や肩の皮膚を5mm程度切開し、(過去に移植したインプラント剤があれば除去して)新しいインプラント剤をそこから移植し皮膚を縫合して終了です。皮膚しか切らないため、かかる時間や出血量もイヌやネコの避妊手術に比べて少なく済むのも特徴です。
繁殖計画に名が挙れば背中のインプラント剤を除去し、発情が来たら雄に頑張って(?)もらって、あとはコウノトリの知らせを待つばかり(笑)。そんな日を思いながらインプラント剤の移植をした一日でした。

<写真補足>
(検査):採血やその他検査もします。
(インプラント剤):3cm程の大きさです。
(手術後):あまり目立ちません?

(主任 小池正充)

検査

手術後