愛媛県立とべ動物園

飼育日記

キーパー飼育日記

ケースバイケース

クロサイ舎の運動場にはモート(空堀)があります。普段、クロサイたちは坂を下りるとモートの中を自由に運動できますが、ここ数年は訳あって出入口を鉄の柱で塞ぎ、彼らがモート内に下りることができないようにしていました。

クロサイの足にはそれぞれ3つの蹄(ひづめ)があり、大人になると体重は1トンを超えます。ある日、蹄にひび割れが入っているのを見つけました。大型の草食動物では、足の怪我が致命傷になることもあるため、この日から蹄のケアを考えました。主な原因は地面に敷いてあるコンクリートやモートをのぼり降りするときの急な傾斜が蹄に負担をかけていたと思います。
その後は蹄の回復をいちばんに考え、モートへの入口を塞ぎ様子を見てきた訳です。蹄への負担はこれで軽減できましたが、次の問題が起こりました。

息子の「ライ」が母親の「クー」とのスパーリング中に誤って足を踏み外し、モートへ転落したのです。
サイのスパーリングは角と角をぶつけ合わせ、押し合いなどをします。クーとライの仲が悪くて喧嘩をしているわけではないので心配はしないでください。スパーリングを通してサイ同士の付き合い方などを学んでいるのです。

最初のうちは体格で勝っているクーは手加減もできましたが、ライの体が大きくなり手加減も難しくなっていたのかもしれません。そのため、蹄はまだ完治していませんが転落の危険性を減らすため以前のように鉄柱を取り除いて行動範囲を広くしました。環境の変化に最初は戸惑っているようでしたが、久しぶりのモートでの運動はいい刺激になったと思います。これまでに、モートに生い茂っていた雑草も3頭のクロサイたちにかかれば1週間も経たないうちに姿を消していました。